2025.06.11 - Wed
maki
第3回 雇用施策検討会に参加いたしました。

5月末、じゅうろくプラザにて開催された『WORK!DIVERSITY実証化モデル事業 ダイバーシティ就労推進地域プラットフォーム会議 第3回 雇用施策検討会』に参加いたしました。
岐阜市への提言に向けた最終ディスカッション
本検討会は、代表・川口が共同発起人として参画しており、今回が全3回の最終回となります。今回も、働き方への意識が高い企業経営者や、一般社団法人・自治体・学校法人の方々が多数参加され、傾聴席にも多くの来場者が見られ、関心の高さが伺えました。
このプロジェクトは、障がい者に限らず、就労が困難な多様な人々が社会参加できる仕組みづくりを目指しています。たとえば、以下のような方々です。
- ひきこもり
- がんサバイバー
- 障がい者(既存制度利用できない)
- ニート
- 刑余者
- 生活困窮
- 難病
- LGBTQ
こうした方々は、不登校や離職などの小さなきっかけから社会と離れ、長期間孤立してしまうケースが多く見られます。社会復帰にあたっては「戻り方がわからない」「一歩が踏み出せない」という心理的な障壁が大きく、継続的な支援が求められています。
しかし、現在の岐阜市の就労支援制度は、障がいの診断がある方に限定される部分があり、実際には多くの方が制度の枠外に取り残されています。本プロジェクトでは、そうした方々を支える「受け皿」としての機能を少しずつ果たし始めています。
支援のあり方と企業の巻き込み
検討会では、「働きづらさ」を抱える人々を支援する一方で、受け入れる企業側の体制や制度設計が不十分である点が指摘されました。現行制度でも企業の声が十分に反映されておらず、現場のニーズとのギャップが課題となっています。
提言に向けたグループディスカッション
今回のテーマは以下の3点でした:
-
提言書の最終精査・感想・修正点
-
提言書の発信方法と広報面の工夫
-
検討会全体の振り返りと今後の展望
前回に続き、多様な立場から活発な意見交換がなされ、企業側の視点も踏まえた現実的な提言が数多く出されました。
マネジメントセンター設立への期待
今回のディスカッションでは、地域の就労困難者を包括的に支援する拠点として「マネジメントセンター」の設立を求める声が多数あがりました。
参加者の一人からは、「企業として相談できる専門窓口がほしい」という実務的な要望が挙がり、また、支援経験者からは「数時間だけ働ける人も多く、時間単位での就労調整ができれば、就職へのハードルは大きく下がる」との提案がありました。
これらの意見を受け、障害者の短時間就労制度の事例を参考に、就労困難者にも適用できる柔軟な制度設計が求められています。また、支援対象者の認定基準については、「医師の診断書だけでなく、社会的な背景や本人の事情を踏まえた柔軟な判断が必要である」との意見も多く、画一的な条件ではなく、多様な状況を考慮できる制度運用が望まれています。
さらに、マネジメントセンターに期待される役割としては、「求人 → 受け入れ準備 → 雇用契約 → 定着支援」までを一貫して行う仕組みが提案されました。また、本人の同意を得たうえで求職者の情報をデータベース化し、企業側からのスカウトが可能となるマッチング機能の導入も視野に入れた議論が展開されました。
企業へのインセンティブと制度の実効性
就労困難者の雇用を促進するためには、受け入れ側である企業への具体的な支援が不可欠であるという点にも、多くの参加者が共感を示しました。
企業経営者からは、「公共工事等の入札時に加点があると、雇用に踏み切る大きな後押しになる」との声があり、障害者雇用や女性活躍推進と同様に、就労困難者の雇用にも制度的な評価軸を設けるべきという提案が出されました。
一方で、「建設業のように入札機会が多い業界では効果があるかもしれないが、その他の業種には直接的な恩恵が少ない」といった意見もあり、制度の恩恵が偏らないような設計が求められました。
さらに、企業にとって最も効果的な支援策として「助成金による金銭的支援が一番わかりやすく、現実的である」との率直な声も紹介されました。表彰制度については、「広報面では有効だが、形式的になって終わってしまう可能性もある」との懸念も示され、評価や支援は実績や継続性を重視すべきという共通認識が形成されました。
呼称と広報の見直し
「就労困難者」という言葉に対しては、そのネガティブな響きや曖昧さを懸念する意見が複数挙がりました。
言葉自体が本人や周囲に与える心理的影響を考慮し、もっと前向きで親しみやすい新たな呼称を検討すべきという指摘があり、「岐阜モデル」として独自のネーミングを開発する案や、「富士市のユニバーサル就労」のように条例化された事例を参考にするアイデアが共有されました。
また、発信手段についても具体的な提案があり、「センターを情報発信のハブとして活用し、企業の取り組みや支援の現場の実情を広く伝えるべき」との意見や、「企業のIR資料やホームページへの掲載を通じて支援の可視化を図る」といった現実的な施策が挙げられました。
このように、経営層だけでなく現場の声も含めて発信することが共感を生みやすく、広報戦略においては実例ベースでの情報提供がより有効であるという認識が共有されました。インフルエンサーの活用や、好事例の積極的な発信など、多面的な広報の強化が今後の課題として明確になりました。
国への提言と制度改革
国への制度改革に向けた提言も議論されました。「現在の制度では自治体単位の工夫には限界がある」との指摘から、地方発でのモデル形成が重要であるとの意見が強く出されました。「まず岐阜市が先行モデルとしてマネジメントセンターを整備し、その成果を基に国への制度改正を働きかけていくべきだ」という方向性に、多くの参加者が賛同しました。
その一方で、「制度を変更するには相当な時間と労力を要し、国を動かすには説得力のある実績が不可欠」との冷静な意見もあり、まずは地元でのモデル事業として成功事例を着実に積み上げる必要性が確認されました。
また、「既存の障害者雇用制度とどのように棲み分けるのか」という懸念も共有され、全国一律かつ柔軟な基準設定が必要であるという合意が形成されました。地方と国の役割分担を明確にしつつ、制度改革を段階的に進める現実的なアプローチが重要だと認識されています。
トライアル雇用制度の柔軟な活用
トライアル雇用制度に関しては、企業側・支援側の両方から「現行制度は正社員前提であり使いにくい」「もっと柔軟な形式で試せる雇用が必要」という問題提起がなされました。
特に、「パートや短時間勤務による“お試し雇用”が可能になれば、企業としても雇いやすくなる」との現場の声が多数あり、マネジメントセンターがこの仲介役を担うことへの期待も高まりました。ただし、「短期雇用が前提になることで、労働者の権利保護が十分に担保されるかどうかは慎重に検討すべき」との意見もあり、倫理的・法的な観点からも制度設計のバランスを取る必要性が強調されました。
加えて、「トライアル中に他社へ移ってしまう」といった実務的な課題も挙げられ、制度運用の細やかな配慮や、企業と支援機関の連携強化の必要性が指摘されました。現行制度の使いづらさを受けて、必須化を避けつつ、実績に応じた支援や融資制度の導入といった見直し案も検討されています。
特に中小企業にとって活用しやすい仕組みとするために、制度の柔軟性と労働者保護の両立が重要課題であり、今後の再設計における中心的な論点となっています。
現場の声を政策へつなげる、意義ある対話の場
議論中には、自治体関係者の方々が各テーブルの話に耳を傾ける場面もあり、現場の熱量がしっかりと伝わっていたことが印象的でした。
総括
検討会の最後には、代表・川口が総括を担当しました。
地方創生には、“定数”と“変数”の両面があります。定数は観光資源など変えられないもの。変数は制度や人の意識といった“ソフト”の部分です。岐阜はこの変数の部分で進化している地域です。今後も、岐阜が先進的な取り組みを推進していく地域であるよう取り組んでいきたい。
今後も、こうした実践的な議論と提言を通じて、岐阜から持続可能なモデルを生み出していけるよう、当社も積極的に関わってまいります。
この記事を書いた人
maki
広報・PR担当/広報ブログや公式Xを更新しています/岐阜やお客さまのことを知ることに日々楽しく奮闘中です♪/特に、地元メディアの方とお話しすることにやりがいを感じてています/ひとり広報