2025.12.08 - Mon
たまちゃん
「Web反響の“質”を上げるためにハードルを上げる」によって生じる機会損失と具体的な対策について
Webサイト運用において、「問い合わせ数(コンバージョン数)」は非常に重要な指標です。しかし、数が増えてくると次に必ず直面するのが「問い合わせの質」という課題です。
- 「自社のサービス対象外の方からの連絡が多い」
- 「確度が低く、相見積もりの数合わせのような依頼ばかりだ」
こうした悩みに対し、Webサイト側でどのような対策が打てるのか。今回は、機会損失(良質な顧客の離反)を防ぎつつ、問い合わせの質をコントロールするための考え方と実践的な施策について解説します。
前提:ここでの「問い合わせの質」の定義
本題に入る前に、前提を整理します。近年、AIやRPAツールによる「営業フォームの自動送信」が急増しています。これらを技術的に完全に防ぐのはイタチごっこであり、非常に困難です。
そのため本記事では、機械的なスパムへの対策ではなく、あくまで「検討意欲を持って訪れた人間(ユーザー)」とのミスマッチをどう防ぐかという観点でお話しします。
「質」と「量」はトレードオフの関係にある
Webマーケティングにおいて、問い合わせの「質」と「量」は、多くの場合トレードオフ(相反する)関係にあります。
- ハードルを下げる(「無料」「誰でもOK」)
→ 問い合わせ数(量)は増えるが、確度の低い問い合わせ(質の低下)も増える。 - ハードルを上げる(「有料」「条件付き」)
→ 本気度の高い問い合わせ(質の向上)が残るが、問い合わせ総数が減る可能性がある。
ここで最も注意すべきは、質のコントロールに意識が行き過ぎて、「本来問い合わせる予定だった良質な顧客」まで遠ざけてしまうリスクです。
「条件に合わない人はお断り」という空気をサイト全体に出しすぎると、良質な顧客であっても「なんだか気難しそうな会社だな」と感じて離脱してしまいます。これは大きな機会損失です。
鉄則:「段階的な実施」と「影響範囲の限定」
では、どうすればよいのか。正解は「伝えるべき情報を、伝えるべきタイミングで、伝えるべき人にだけ届ける」ことです。
サイト全体で広く網をかけるのではなく、「問い合わせ直前のユーザー」にだけフィルタリング(選別)をかけるのが理想です。
具体例:無料相談を「有償化」したい場合
分かりやすい例として、これまで「無料」だった相談対応を「有償」に切り替えるケースを考えてみましょう。
❌ よくある失敗パターン
⇒トップページで「※相談は有償です」と大きく告知してしまう
トップページや全ページのヘッダーボタンに「※相談は有償です」とデカデカと書いてしまうパターンです。これを見たユーザーは、まだあなたの会社の強みや「なぜ有償なのか」を知る前に、「金とるのか、じゃあやめよう(他社は無料だし)」と判断し、サイトの中身を読まずに去ってしまいます。
❌ 推奨される施策パターン
⇒問い合わせフォームの冒頭で、理由とセットで告知する
トップページやサービス紹介ページでは、自社の魅力や解決策を存分に伝えます。そして、ユーザーが「ここに相談したい!」と気持ちが高まった状態(=問い合わせフォームに遷移した瞬間)で初めて、以下の情報を伝えます。
- 条件の提示:「ご相談は有償となります」
- 理由の提示(ポジティブ変換):「他社とは異なり、事前の詳細な分析とレポート作成まで行うため、費用をいただいております」
このように「問い合わせる意思のある人しか見ないページ(フォーム)」で、納得感のある理由と共にハードルを設けることで、良質な顧客の意欲を削ぐことなく、ミスマッチ層だけをフィルタリングできます。
データで検証できる設計にする
施策の影響範囲を「問い合わせ直前(フォーム)」に限定することには、分析上の大きなメリットもあります。
もしトップページで「有償」と書いてしまうと、どこでユーザーが諦めたのか計測が困難です。しかし、フォーム上での告知であれば、以下の3段階で数値を追うことができます。
- 問い合わせボタンのクリック数(興味を持った人数)
- フォーム入力開始率(条件を見て納得した人数)
- フォーム送信完了数(最終的なCV)
「①→②」の間で離脱が増えたのであれば、「有償という条件(またはその伝え方)が原因だ」と明確に特定できます。
これにより、「条件を緩和しよう」や「有償の価値が伝わっていないので説明文を変えよう」といった、精度の高い改善サイクルを回すことが可能になります。
「質の低下」を顧客のせいにせず、サイト側の課題として捉える
最後に、マインドセットの話になりますが、「問い合わせの質が悪い」と感じた際、顧客のモラルやリテラシーのせいにするのは簡単です。しかし、「そうさせてしまっている原因がサイト側にあるのではないか?」と考えることが、根本解決への近道です。
たとえば、こんな風に深掘りしてみます。
↓
「サービス内容や注意書きが読まれていないからではないか?」
↓
「なぜ読まれないのか?」
↓
「情報が見つけにくい、文章が長すぎる、デザインが読みづらいのではないか?」
↓
「もしかして、ページの読み込みが遅い、スマホで見づらい、動線が複雑すぎるのではないか?」
このように掘り下げていくと、意外と「Webサイトの使い勝手(UI/UX)」が原因で、ユーザーが情報を読み飛ばしていたり、ストレスを感じたまま問い合わせボタンを押していたりすることがあります。
ユーザーを「選別」する前に、まずはユーザーにとって「分かりやすく、ストレスのない」環境が提供できているか。次の2つの軸で改善を行うことが、結果として「お互いにとって幸福なマッチング」を増やすことに繋がります。
この記事を書いた人
たまちゃん
マーケティングデザイン部 マネージャー/Webマーケター 大学在学中に、複数Webメディアを立ち上げ、アフィリエイターとして法人化。設立から2年後、社会貢献などの「働きがい」を求め、リーピーにジョイン。 現在は、現場で培ったWebサイトの運用経験を元に、お客様サイトの運用代行や自社コーポレートサイトの運用など、幅広いマーケティング領域を担当。
世界的なWebデザインアワードも受賞!
全国にある制作会社でも随一を誇る、14名のWebデザイナーが在籍。
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