2020.02.29 - Sat
利益の出し方~高収益製造業の共通点~
日経トップリーダー2020年3月号で、高収益製造業の共通点が特集されていて、この内容が大変参考になったので、ご紹介します。2020年代に勝つ中小製造業経営者が今すべきこととして、4つのポイントがまとめられています。これは製造業に関わらず、どの業種でも参考になる内容だと思いましたので、ご覧ください。
1.日本市場だけを見ず、海外で売れる製品を育てる
中小企業では、海外市場まで見ることは難しいケースが多く、どちらかというと海外への販売ではなく、海外で製造をしている中小企業は多いと思います。ただ、当然、国内は人口が減り続けているので、海外にも活路を見出さないといけない時代に来ています。当社も海外に直接販売できているわけではなく、最近増えているものとしては多言語対応のWebサイトを制作することですが、これもまだ間接的なもので十分ではありません。東南アジアでは、facebookやinstagram自体が企業の公式ホームページのようになっているケースが多く、そもそもWebサイトを持っていない会社も多いと聞きます。Web業界での今後の対応を考えると、作る技術は持っているので、自社でプロダクトを作り、それを海外を見据えて展開していくことだと思います。当社としても海外を狙うのであれば、これだと思います。本の中にも書かれていますが、海外対応は中小企業では難しいケースが多いので、2以降の数値管理をまずは始めるべきだとも述べられています。
2.原価管理を精緻にし、自己資本を厚くする
この原価管理については、いわゆる管理会計の分野にも通じると思います。管理会計を行っている会社は世の中の5%程度だと、会計士や税理士の方々数名に聞きましたが、全員同じ感覚で5%と言われています。数値管理を徹底することで、利益を増やし、自己資本を厚くし、その余力で新製品開発や新規受注を増やすための戦略に打って出るべきだと書かれています。
これは当社でもここ2,3年で強く意識している部分で、まずは数値管理を徹底することから始めています。当社が開発した生産性改善を目的とした日報管理ソフト「Pace」はまさにこのためのツールです。当社のような受託の会社であれば、制作にかかった時間がそのまま原価として乗ります。つまり、受注時点で明確な利益が確定しているわけではなく、内容によっては採算が割れてしまうビジネスモデルです。逆を言うと、早く終わらせれば、利益が出るわけですが、どうしても品質の面を考えると、欠かせない工程も多く存在します。そこに対して、当社ではRPAやAIによる自動化を進めています。現状ではここに投資している分の費用対効果が良いかと問われると、人がやるのとそう変わらない原価がかかっていますが、当社としては、「人はクリエイティブな仕事に集中すべき」という考え方があるので、自動化できる部分はツールを使って自動化させようとしています。それにより、質を落とさずに早く制作することを目指しています。結果的にそれが早く納品できることにも繋がり、「早さ」という差別化も生まれると考えています。しかし、こういった努力はあくまで、「既存業務の効率化」に過ぎません。効率化はどこかで行き詰まります。そのために、そもそものサービス内容を変えていかなければいけないと考えています。この点はWebサイト制作という一見、どこも同じように見えるサービスですが、注文住宅の世界と同じで、オーダーメイドのように見えて、実際は完全なオーダーメイドではないのと同じで、Webサイト制作もある程度の規格化が必要だと考えています。そのために取り組んでいることも多々ありますが、この規格化において、生産性を上げると同時に他社との差別化に繋がるものを見つけ取り組むことで、受託という毎回オリジナルで制作するビジネスモデルでも、生産性と付加価値を上げることができると考えています。それを検証するためにも日々の数値管理が必要です。日次で生産性を見ていきます。当社の場合は人が作業するので、日報を使って、数値管理をしています。Paceはこのあたりに特化したツールなので、自社が一番のヘビーユーザーになることで、このPace自体の価値も広められるのではないかと考えています。
3.価格や流通の主導権を取る事業モデルに転換
よく塗装業界などで、下請けから元請けになりたいという要望を頂きます。価格や流通の主導権を取るにはそもそもの事業モデルを変えないと無理です。より川上に近いビジネスを展開しない限りは主導権を取ることはできません。この主導権が受託のビジネスでは、誤解されてしまうと、お客様から嫌がられることもあります。提供者側が主導権を持ったとしても、それがお客様の欲しいものになっていないとダメで、そのためには様々な知識が必要になります。提供者側が自由に提案しているのに、それがお客様にとってのメリットとも合致している提案になっていることがベストです。教育の面で大変時間もかかる部分ですが、ここが出来るようになると、明らかな差別化になります。同じ受託のビジネスですが、細かく話を聞くと、全く違うサービスのように感じていただけることが理想です。当社もこの姿を目指しています。いかに、お客様のメリットとなるものを、それがお客様がまだ気づいていない価値として提供でき、結果にも繋がる、そんなサービスを提供し続けたいと考えています。
4.明確な数値目標を定め、社内の意識を高める
そして、そういった活動それぞれに目標を定め、定量的に管理していきます。定量的な目標を掲げているチームは、そこに対し、一人ひとりが工夫をして突き進むようになります。中小企業の場合は目標売上も社内で共有していない会社も多いと思いますが、それはこれまでは比較的、終身雇用に近く、その会社で働き続けることが前提にあり、働きやすさや居心地の良さ、ある程度納得できる給料があれば、従業員が辞めることが無かったからだと思います。しかし、今は20代を中心に仕事選びの価値観は確実に変わっていっています。僕が社会人になった2006年当時は夜中まで働くことがまだまだ残っていた時代でした。しかし、その当時、その働き方に何か疑問を抱いていたかというと、全く何も感じていませんでした。それが当たり前だと思っていましたし、それによって、自分自身が成長できているような実感もあったからです。ただ、時代も変わり、仕事への考え方も変わってきています。とはいえ、これからのAIが価値を生み出す時代を考えると、今の価値観の方が間違いなく時代に合っています。人は仕事をするために生まれたわけではないわけなので、価値を生み出す仕事に人は取り組まなければいけません。つまり、もっと頭を使う、知恵を出す仕事です。頭を使うので、それは働く時間が関係するわけではありません。ただ、この時に気を付けなければいけないのは、頭を使う仕事が増える以上は自分のキャリアを考えた時にも頭を使えるようにならないといけないということです。楽そうだと思う判断を続けていると、やっぱり成長は遅いと思います。あとは昔から言われていますが、仕事に対する前向きな思考、姿勢です。こういった思考を培うためにも数値目標が必要だと考えています。
この4つのポイントが利益の出し方として紹介されていました。
最近のコロナの影響で一時的に景気が落ち込むことは間違いありませんが、リーマンの時とは違って、一過性の印象が強いので、ここで攻めの姿勢を落としてしまうと、自社の成長を止めてしまうので、今後の景気に関わらず積極的に投資をして、会社を成長させようと考えています。SalesForceは売上に対して営業・マーケティングコストを50%弱も投資しているそうです。OracleやAdobeですら、売上の20%強を投資しています。Saasベンダーなので、ここの投資割合が多いのは当然ですが、それにしても、売上の50%を営業とマーケティングに投資しているのは、一言で言うと、半端ないと感じます。
成長している会社は投資を止めない。
こういう不景気になりそうな時だからこそ、もっと投資をする。
この週末は自社の経営計画書をアップデートしながら、そんなことを考えています。