「移住採用」という選択肢を持つことが、実は採用強化の近道かもしれません。
「移住採用」
これは個人的に、これからの採用領域において、増え始めるのではないかと感じている言葉です。
当社は採用領域においての相談も多く頂くのですが、その都度、「移住採用」の必要性を説いています。その際必ず、「移住採用なんて、出来るの?」と言われます。実際、当社は従業員の半数が移住組です。岐阜の田舎の中小企業でも、採用活動エリアを全国に広げれば、十分にその可能性はあります。
当社の新卒採用においては、北は北海道から南は熊本まで求人票を出します。その結果、地方から当社を受けに来て、そのまま入社に至ったメンバーもいます。(現在、新卒入社組は合計8名いますが、このうち、岐阜県多治見市出身の子が1名いるだけで、残り7名は県外からの採用です。)
そもそも、地元には人が少ないので、「移住採用」も視野に採用活動を行った方が、採用できる確率が上がるものです。普段の採用活動においても、求人票を地元だけではなく、全国を対象に出すだけでも改善されます。ただ、意外と、たったこれだけのことをやっていない企業が多いのも現実です。
しかし、数字で見ると、その必要性も分かると思います。
移住に関しては、全国の自治体を見渡しても、多くの自治体が、同じような内容の移住ポータルサイトを1つどころか、いくつも立ち上げ、都心に移住相談センターを開設したり、様々な施策を行っています。定住人口を増やすにあたって、今の方向性が適切かというと、個人的には全然ダメだと思っています。自治体は予算を付け、サイトを作り、相談センターを作りましたが、その結果が今の定住人口の減少に繋がっているので、今の施策の強化をしても意味がありません。一般企業の営業活動であれば、成果が出なければ、そもそものやり方を疑うのが当たり前なので、別の施策を講じないと、結果が好転しないのは当然です。
地元岐阜県でも2018年10月に、『岐阜県の人口減少の現状』という資料を発表しています。
https://www.pref.gifu.lg.jp/kensei/tokei/tokei-joho/11111/gifuken-genjo/ken-shichoson-genjo.data/201810jinkou-gensyou.pdf
スライドの1枚目から“日本全体で人口は減少しています”と始める、なんともエクスキューズな内容から始まるあたりが、人口減少に対する対策の不十分さを物語っている印象を受けますが、この資料のP.18でも“転出超過の中心は20代の若い世代。職を求めて県外へ出ていってしまうとみられる。”と展開しています。これは高校生の数に比べて、大学の実際の入学者数が半分くらいなので、当然県外に流れます。定員割れの大学も多いので、受け皿としては本当はあるのですが、大学としての訴求力が弱まっていることも関係しています。(これは、地方創生の話題でもよく聞く話です。)
<参考>
岐阜県内の高校三年生の数:約14,000人
岐阜県の大学進学率:約70%
大学進学者数:約10,000人
岐阜県内の大学(短大含む)への実際の入学者数:約6,500人
国立大学や医学系の大学で1/3を占めるので、県外からの入学者数もそれなりにいると考えると、地元の高校生はそもそも県外への大学進学という選択肢になるのも仕方ありません。そうすると、やはり県外に出た学生はその場所、もしくは東京などに就職で流れます。この流れは大学が大きな変革をし、地元学生が地元に居続けるようにならなければ、この時点での人口流出は食い止められません。
これでは地方企業の新卒採用において、そもそも学生が地元にいないので、地元だけを対象とした採用活動では、すでにマーケットとしては小さいわけです。営業活動でも同じですが、狭いマーケットでどれだけ頑張っても、すぐに限界が見えます。今の多くの企業の採用活動は、そのマーケット感と合っていない採用活動をやっているので、採用難になっていると考えます。岐阜のハロワにだけ求人を出しても、採れるわけがありません。
そうなると、社会人になってから地元に戻す「Uターン採用」や、結婚を機に旦那さんの転勤で、といった「Iターン・Jターン採用」により、移住者を増やさなければ、定住人口の増加、つまり企業の新規採用も増えないことになります。
翻って、自分自身のことで考えると、何も縁が無く、岐阜に移住したかというと、当然そんなはずはありません。結婚相手が岐阜の人だったので、子育てのことを考え、同時に地方で起業したいという想いがあったので、岐阜に移住することを決めたわけです。
つまり、移住理由として、現実的なのは「仕事」や「結婚」だと思うのです。
「自然豊かで」とか、「子育てが」といったソフト面の訴求だけで、何も縁が無い人が地方に移住するケースは極めて少ないように思います。ただ、たまにそういう人もいるので、移住の形としては目立つということもあり、自治体はそのような「コンテンツ訴求型の移住」を推進している印象があります。
しかし、本当に移住を推進するのであれば、自然の風景などのコンテンツ訴求よりも、現実的な「仕事」訴求での移住の方が確率は増えると考えます。そのためにも、「移住採用」の促進が人口増加には効果的だと思うのです。自治体は中小企業に対して、「移住採用をしたら、補助金を出す。」という制度を作った方が、地方の中小企業は「そんな選択肢もあるのか!?」と気付き、採用活動の範囲を広げるようになると思います。
それが結果的に、人口減少に歯止めをかけることにも繋がり、採用難で困っている中小企業も潤ってくることに繋がるはずです。
企業は採用活動エリアを全国対象に拡げ、自治体は企業の採用活動を後方支援するような施策を打ち出す。
こっちの方が、移住ポータルサイトや移住相談センターよりも、多面的に見て、プラスの効果が大きいように思います。